愛読書📙「よくわかるセイバーメトリクス」をペラペラとめくって読んでいると、面白い内容を見つけました。
野球のセオリーを180度覆すデータ戦術「オープナー」です。オープナーとは、本来救援であるはずの投手が先発し、短いイニングを担当する継投のことです。この投手の降板後は、本来の先発投手が長いイニングを担当します。
📊 山本由伸のデータが証明する「対戦巡の絶望的リスク」と3巡目のジンクス
なぜ、本来ならリリーフで投げるような投手をわざわざ1回頭から「先発」としてマウンドに送るのか。その背景には、対戦を重ねるごとに打者が投手の球筋に完全に慣れてしまうという、セイバーメトリクスが弾き出した客観的データが存在します。
メジャーリーグ(MLB)の平均データ、そして世界最高峰のエースである山本由伸投手の「打者対戦巡ごとの三振奪取率」を比較すると、そのリスクは一目瞭然です。
| 対戦回数 | MLB平均 三振奪取率(2015-22年) | 山本由伸 三振奪取率(2022年) |
|---|---|---|
| 打者1巡目 | 23.4% | 32.5% |
| 打者2巡目 | 20.6% | 27.8% |
| 打者3巡目 | 18.8% | 26.2% |
| 打者4巡目 | 17.9% | 13.7% |
ご覧の通り、どんなに優れた魔球を持つ投手であっても、4巡目ともなれば三振を奪える確率は劇的に低下します。特に山本由伸投手に至っては、1巡目の32.5%という驚異的な数字から、4巡目には13.7%と半分以下にまで落ち込んでしまうのです。打者の「目」が慣れる恐怖は、データが100%証明しています。
オープナー戦術は、最初の1イニング(相手の上位打線)を別の投手に任せることで、2番手に控える「本来の先発(バルクガイ)」が相手の最強打線と3回目に対戦するタイミングを試合の終盤へとズラし、失点確率を極限まで下げる画期的なシステムなのです。
🔥 もし昨日「工藤→大竹」の逆転リレーをやっていたら?
この最先端戦術を、昨日のタイガースの試合(先発:大竹、結果:6回60球降板)に当てはめてみましょう。実際の継投は「大竹→工藤」でしたが、もしこれを180度ひっくり返して「1回表の先発:工藤泰成、2回からの2番手:大竹耕太郎」というオープナー戦術を採用していたら、相手打線にとって悪夢のようなハメ技が完成していました。
💡 理由①:防御率1.47&調子アゲアゲの工藤で「上位打線」を力づくで封殺!
オープナーの絶対任務は「1回表の相手上位打線を100%ゼロに抑えること」。昨日のベンチ入りメンバーの中で、防御率1.47と抜群の安定感を誇り、調子も「上向き⬆️」だったイキのいい右腕・工藤投手を1回頭にぶつけるのは、データ上もっとも理にかなっています。ここでは岩崎優(防御率1.02)やドリス(防御率1.17)といった守護神・セットアッパー陣を1回に浪費せず、若手の勢いを利用するのがセオリーです。
💡 理由②:右の剛腕から左の緩急へ!相手の目をバグらせる「左右の強烈ギャップ」
1回表、相手の上位打線に工藤投手の勢いのある「右の生きた球」をバシバシ見せておいて、2回表からいきなり大竹投手の「左の技あり変化球と絶妙な緩急」にスパッと切り替えます。この「右から左への急転換」をやられると、相手打者は打撃タイミングが完全に狂い、大竹投手の球を捉えるのがさらに困難になります。
💡 理由③:相手の「先発対策」を1イニングでゴミ箱へ!
相手ベンチが「明日の先発は工藤か。じゃあ左打者をズラリと並べたスタメンでいこう!」と作戦を立てても、2回表には「左の大竹」が立ちはだかることでその目論見はいきなり破綻します。2回から本来の先発(バルクガイ)である大竹投手を投入したときには、相手は試合序盤すぎて代打を出すわけにもいかず、ベンチの頭脳戦でも圧倒的な優位に立つことができるのです。
❓ 今のNPBルールから見た「予告先発の合法性」
ここで誰もが「でも、今のプロ野球には予告先発があるじゃないか。前日に先発を発表させておいて、1回でスパッと代えるなんてルール違反(あるいはマナー違反)にならないの?」という疑問を持つはずです。
結論から言えば、このオープナー戦術は、現在のNPBのルール(公認野球規則)に照らし合わせても「100%合法」であり、何の違反でもありません。
なぜなら、予告先発制度の厳密なルールとは、あくまで「明日の試合、1回表(または裏)のマウンドに上がり、相手の1番バッターに対して最初に投げる投手は誰か」を事前に公表する約束事だからです。
前日に「明日の先発は工藤」と発表し、予告通りにマウンドに送っていれば、その投手をベンチが1イニングで降ろそうが、それは「ベンチの作戦の自由」の範疇であり、ルールをどこからどう突いても文句のつけようがない立派な戦術なのです。
かつて予告先発がなかった時代、試合開始直後に1歩もグラウンドに立たずに即交代させていたダミー用の「偵察メンバー(当て馬)」とは違い、オープナーは実際にマウンドに上がり、打者3〜4人を相手に全力でアウトをもぎ取ってから退くため、極めてクリーンで正当な役割を果たしています。
🏆公認野球規則の盲点を突いたバルクガイの特権
ここで興味深いのは「2番手として4〜5イニングしか投げない大竹投手(バルクガイ)は、好投しても勝ち星がつかないのではないか?」という点です。
現代の公認野球規則が生んだ非常に面白いマジックにより、「バルクガイは5イニングを投げ抜かなくても🏆勝利投手になることができます。」
- 先発はあくまで1番手:ルール上、1回を投げた工藤投手が「先発投手」として記録されます。
- 2番手は「救援投手」扱い:そのため、2回からマウンドに上がる大竹投手は「リリーフ(救援投手)」の規約が適用されます。
- 勝利投手の条件:救援投手が勝ち投手になるための条件は「5イニングの義務」ではなく、「自らが登板中、またはそのイニングの攻撃で味方が勝ち越し、そのリードを保ったまま降板してチームが勝利すること」です。
- 公式記録員の裁量:最終的に、その試合の勝利に最も貢献した(効果的な投球をした)と公式記録員に認められれば、3〜4イニングの投球であっても堂々と勝ち星が与えられます。
昨日、大竹投手は「6回60球」という超省エネな快投を見せましたが、もしスタミナや谷間のローテに不安がある投手であっても、このオープナーを盾にすることで「4イニングの好投で効率よく白星を掴む」といったシステム上の運用が可能なのです。
伝統や先発の美学を重んじる環境では「ずるい」「邪道だ」と大激論を巻き起こすことも多いこの戦術ですが、セイバーメトリクスの論理、そして野球規則の仕組みから見れば、これ以上ないほど緻密で合理的な勝利へのロードマップと言えます。
実はこのオープナー、あの『令和のアイデアマン』栗山さんが2019年に日ハムで監督をしていた時、加藤貴之や堀瑞輝を使って、日本で初めて実験して成功させています。 当時は『先発の格を壊すな!』って古い球界から大ブーイングだったみたいだけど、データで見たら100%理にかなっています。ぜひ、こんな奇想天外ともいえるような戦術をNPBで、そしてわれらが阪神タイガースでも見てみたいものです。


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